和歌と俳句

五月雨 さみだれ

さみだれのうつほ柱や老が耳 蕪村

五月雨や美豆の寐覚の小家がち 蕪村

さみだれや名もなき川のおそろしき 蕪村

湖へ富士をもどすやさつき雨 蕪村

さつき雨田毎の闇となりにけり 蕪村

さみだれや仏の花を捨に出る 蕪村

小田原で合羽買たり皐月雨 蕪村

あか汲で小舟あはれむ五月雨 蕪村

さみだれや鳥羽の小路を人の行 蕪村

皐雨や貴布禰の社燈消る時 蕪村

さみだれの大井越たるかしこさよ 蕪村

さみだれや大河を前に家二軒 蕪村

帋燭して廊下過るやさつき雨 蕪村

うきくさも沈むばかりよ五月雨 蕪村

さみだれに見えずなりたる径かな 蕪村

五月雨や滄海を衝濁水 蕪村

床低き旅のやどりや五月雨 蕪村

さみだれの石に鑿する日数哉 召波

五月雨や昼寝の夢にうつの山 召波

さみだれや岸の山吹ふりしづめ 暁台

さみだれやけぶりの籠る谷の家 白雄

さみだれの漏て出て行庵かな 太祇

さみだれや夜明見はづす旅の宿 太祇

五月雨や夜もかくれぬ山の穴 一茶

五月雨や夜の山田の人の声 一茶

五月雨や二階住居の艸の花 一茶

五月雨や胸につかへる秩父山 一茶

五月雨にざくざく歩く烏哉 一茶

さみだれや肩など叩く火吹竹 一茶