和歌と俳句

京極関白家肥後

あかざりし はなになれたる から衣 こころのほかに かふるけふかな

卯の花の 咲ける垣根は ふゆごもり ともまつ雪の ここちこそすれ

もろ人の かざすは ちはやふる 神にたのみを かくるなりけり

やまふかく たづねきぬれば ほととぎす しのぶるこゑも かくれざりけり

あやめ草 けふはかからぬ 軒ぞなき かずしらぬまに ひけるなるべし

田子のとる 早苗をみれば おいにけり 諸手に急げ むろのはやわせ

さつき闇 くもまの星と みえつるは 鹿たづねいる ともしなりけり

もしほ草 ほすひまもなき さみだれに やかでやあまの しほをたるらむ

ふるさとは 花たちばなの 咲けるにぞ 香をしるべにて 人も訪ひける

ともし火と みゆるの 光かな うべたまづさを かげでよみけり

蚊遣火を まぢかくたてて やまがつの おのれけぶりに むせぶなにぞも

くれなゐに ふかくもにほふ はちすかな いけのこころや きよくそむらむ

こほりゐて ちとせのなつも きえせじな まつかさきなる ひむろとおもへば

たちよれは すずしかりけり なつごろも 秋や泉の 底にすむらむ

夏はつる 夕べになれば 川波に 麻の禊を せぬ人ぞなき