和歌と俳句

種田山頭火

前のページ< >次のページ

蛙さびしみわが行く道のはてもなし

蛙蛙独りぼつちの子と我れと

ふと覚めて耳澄ましたり遠雷

朝日まぶし走り来て梧桐をめぐる児ら

けふの日も事なかりけり暑し

桐並木おだやかに昇る月かな

桐の葉垂れつ沈みゆく街あかり

桐一葉一葉一葉の空仰ぎけり

蜻蛉二つ漂へる空の晴れてゆく

水を挟みて飛び競ふの真昼

稲は穂に穂を重ねたれ祭太鼓鳴る

空の深さ櫨の実摘む児のうららかさ

梅もどきひそかなる実のこぼれけり

ちらちら人走る方へ日落ちたり

一路白しま空の月の冴ゆるかな

鴉しきりに啼き炭火きえけり

死人そのままに砂のかがやき南無阿弥陀仏

朝顔のゆらぎかすかにも人の足音す

海鳴きこゆ朝顔の咲きけるよ

淋さ堪へがたし街ゆけば街の埃かな

霧のなか旭のなかかがやくはお城