わかれきてつくつくぼうし
また見ることもない山が遠ざかる
こほろぎに鳴かれてばかり
れいろうとして水鳥はつるむ
百舌鳥啼いて身の捨てどころなし
どうしようもないわたしが歩いてゐる
涸れきつた川を渡る
ぶらさがつてゐる烏瓜は二つ
すすきのひかりさえぎるものなし
分け入れば水音
すべつてころんで山がひつそり
雨の山茶花の散るでもなく
しきりに落ちる大きい葉かな
けさもよい日の星一つ
すつかり枯れて豆となつてゐる
つかれた脚へとんぼとまつた
枯山飲むほどの水はありて
捨てきれない荷物のおもさまへうしろ
法衣こんなにやぶれて草の実
旅のかきおき書きかへておく
岩かげまさしく水が湧いてゐる
あの雲がおとした雨にぬれてゐる