和歌と俳句

種田山頭火

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石にとんぼはまひるの夢みる

昼寝ふかい村から村へのうせんかづら

日ざかり、学校の風車まはつたるまはらなかつたり

青田かさなり池の朝雲うごく

朝風の青柿おちてゐて一つ

ふるさとの蟹の鋏の赤いこと

ふるさとの河原月草咲きみだれ

お墓の、いくとせぶりの夏草をぬく

秋草や、ふるさとちかうきて住めば

が鳴く一人になりきつた

一人となればつくつくぼうし

いつも一人で赤とんぼ

墓へ藷の蔓

秋風のふるさと近うなつた

朝月にこほろぎの声もととなうた

雨ふるふるさとははだしであるく

三日月、遠いところをおもふ

木の実草の実みんなで食べる

枯れようとして朝顔の白さ二つ

鳴いてきてもう死んでゐる

こほろぎがわたしのたべるものをたべた

また逢ふまでのくつわ虫なく

お祭ちかい秋の道を掃いてゆく

案山子、その一つは赤いべべ着せられてゐる

鳴くかよこほろぎ私も眠れない

二百十日の山草を刈る

秋の水ひとすぢの道をくだる

すわればまだ咲いてゐるなでしこ

かるかやへかるかやのゆれてゐる

がある、あるけばあるく影の濃く

こほろぎよ、食べるものがなくなつた

月かげひとりの米とぐ

おまつりのきものきてゆふべのこらは

まづしいくらしのふろしきづつみ

斬られても斬られても曼珠沙華

ほつとさいたかひよろひよろコスモス

まづたのむ柿の実のたわわなる

なつめたわわにうれてここに住めとばかりに

枝もたわわに柿の実の地へとどき

彼岸花の赤さがあるだけ

移つてきてお彼岸花の花ざかりの

柿が落ちるまた落ちるしづかにも

柿は落ちたまま落ちるままにしてをく

身にちかくあまりにちかくつくつくぼうし

つくつくぼうしつくつくぼうしと鳴いて去る

咲いてこぼれてである

しづけさはこほろぎのとぶ

夜の奥から虫があつまつてくる

三日月、おとうふ買うてもどる

ひとりで酔へばこうろぎこうろぎ