和歌と俳句

青嵐

滝の上に出て滝見えず青嵐 たかし

滞船のひしめき搏つや青あらし 普羅

濃き墨のかはきやすさよ青嵐 多佳子

青嵐飢と読書に焔だち 知世子

よくぞ来し今青嵐につつまれて 虚子

青嵐大事去りにしごとくあり 節子

動くものみな緑なり青嵐 石鼎

懐しき心起りぬ青嵐 石鼎

雲の脚そぞろ東へ青嵐 石鼎

もそろもそろ晴れては曇り青嵐 石鼎

高松の幹動かせて青嵐 石鼎

たすきかけて雲水がせい青あらし 万太郎

外燈のふらつく鉄笠青あらし 誓子

とまり木に老いける鷲や青あらし 秋櫻子

一切の混沌青嵐矢つぎばや 多佳子

青嵐滅びの砂岩砂こぼす 三鬼

弱木より動き吉野の青あらし 静塔

青嵐危ふきときは身を屈し 多佳子

青嵐日向に出でし人光り 立子

鱒釣れてひらめく宙や青あらし 秋櫻子

鶏百羽一羽ころげし青嵐 楸邨

鶴の毛は鳴るか鳴らぬか青あらし 楸邨

青あらし生あるものは皆揉まれ 楸邨

わが科や谷谷見ゆる青あらし 楸邨

青嵐朴なぶられてをりにけり 青畝

青あらし身も日輪もくつがへり 楸邨

青あらし白樺の葉も与したり 静塔

子神輿は軽し贔屓の青あらし 静塔

禁男子ちらつくごうと青嵐 静塔

為朝の弓弦鳴りしか青あらし 秋櫻子

青嵐遠くよりもの見えきたる 楸邨