和歌と俳句

富安風生

山道の掃いてありたる初詣

夜風添ふ篝の火の粉初詣

初詣よその母子をなつかしみ

木場の子は材木に乗り毬つけり

枝にかけかりそめめけるかな

裏山に手づから剪りて歯朶長し

神を畏れ人をゆかしみ初詣

立てばしやんと昔覚えの舞の春

初髪にかかるも神の埃かな

初日まつ心しづかにたかぶりぬ

多摩の子は椿の下に手毬抱き

老の頬にしづかにたたへ初笑

初鶏やしづかに長き老の息

老妻のしづかにつかふ初箒

二日暮れ今年も二日たちにけり

松過の風雪にある小家かな

庵の井の水はやらかき初湯かな

我も折れていはるるままに寝正月

天われにこの壽を賜ふ粥柱

影の添ふごとく事へて妻の春

残生のいよよ愛しく年酒酌む

願ふことただよき眠り宝舟

松立てて繁華の中の小廬かな

俳諧にかかはらぬものを読始