和歌と俳句

千載和歌集

釈教

顕昭法師
谷水をむすべばうつるかげのみや千歳をおくる友となりけん

法橋泰覚
朽ちはてて危ふく見えしをばただの板田の橋も今渡すなり

藤原敦仲
うらみけるけしきや空に見えつらん姨捨山をてらす月かげ

蓮上法師俗名成実
日のひかり月のかげとぞ照らしけるくらき心のやみ晴れよとて

皇太后宮大夫俊成
さらにまた花ぞ降りしく鷲の山法のむしろの暮れがたの空

中原有安
待ちいでていかにうれしく思ふらん二十日あまりの山の端の月

中原清重
朝まだき御法の庭に降る雪は空より花の散るかとぞみる

恵章法師
望月の雲かくれけむいにしへのあはれを今日の空に知るかな

俊秀法師
清く澄む心のそこを鏡にてやがてぞうつる色もすがたも

寂然法師
けぶりだにしはしたなびけ鳥辺山たちわかれにし形見とも見ん

平康頼
鳥のねも浪の音にぞ通ふなるおなじ御法を説けばなりけり

藤原定長朝臣
世を救ふ跡はむかしに変らねどはじめ建てけん時をしぞおもふ

天台座主明雲
常ならぬ定めは夜はのけぶりにて消えぬなごりを見るぞうれしき

律師永観
みな人を渡さむとおもふ心こそ極楽にゆくしるべなりけれ