和歌と俳句

千載和歌集

神祇

上東門院
三笠山さして来にけりいそのかみ古き御幸の跡をたづねて

大納言経輔
住吉の浪も心を寄せければむへぞ汀に立ちまさりける

後三条内大臣公教
おもふこと汲みてかなふる神なれば塩屋に跡を垂るるなりけり

崇徳院御製
道のべの塵に光をやはらげて神も仏のなのるなりけり

藤原清輔朝臣
あめのしたのどけかれとやさかき葉を三笠の山にさしはじめけん

大納言隆季
神世より津守の浦に宮居して経ぬらん年の限り知らずも

右大臣実定
数ふれば八年へにけりあはれわが沈みしことはきのふと思ふに

皇太后宮大夫俊成
いたづらにふりぬる身をも住吉の松はさりともあはれ知るらん

右大臣実定
ふりにける松ものいはば問ひてましむかしもかくや住の江の月

俊恵法師
住吉の松のゆきあひのひまよりも月さえぬれば霜は置きけり

権大納言実国
おしなべて雪のしらゆふ掛けてけりいづれ榊のこずゑなるらん

按察使資賢
めづらしく御幸を三輪の神ならばしるし有馬の出湯なるべし

権中納言経房
うれしくも神の誓ひをしるべにて心をおこす門に入りぬる

僧都範玄
杉が枝を霞こむれど三輪の山神のしるしはかくれざりけり

平実重
今までになど沈むらん貴船川かばかり早き神を頼むに

賀茂政平
さりともと頼みぞかくるゆふだすき我が片岡の神と思へば