和歌と俳句

千載和歌集

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式子内親王
袖の色は人の問ふまでなりもせよ深き思ひを君し頼まば

左近中将良経
秋はをし契りは待たるとにかくに心にかかる暮の空かな

藤原成家朝臣
恋をのみしぐるる空の浮雲は曇りもあへず袖濡らしけり

藤原家実
磯がくれかきはやれども藻鹽草立ちくる波にあらはれやせん

藤原家隆
暮にとも契りてたれか帰るらん思ひ絶えぬるあけぼのの空

よみ人しらず
契りおくその言の葉に身を替へてのちの世にだに逢ひみてしがな

殷富門院尾張
たれゆゑかかくがれにけん雲間より見し月かげはひとりならじを

藤原家基
越えやらで恋路にまよふ逢坂や世を出ではてぬ関となるらん

西住法師
手枕のうへに乱るる朝寝髪したに解けずと人は知らじな

前右京權大夫頼政
我が袖の潮の満ち干る浦ならば涙の寄らぬをりもあらまし

法印静賢
潮たるる袖の干るまはありやともあはでの浦の海人に問はばや

俊恵法師
思ひきや夢をこの世の契りにて覚むる別れを歎くべしとは

藤原隆信朝臣
我ゆゑの涙とこれをよそに見ばあはれなるべき袖のうへかな

賀茂政平
逢ふことのかくかたければつれもなき人の心や岩木なるらん

源光行
恋ひ死なむ涙のはてや渡り川深き流れとならんとすらん

二條院讃岐
我が袖は潮干に見えぬ沖の石の人こそ知らねかわくまぞなき

民部卿成範
かかりける歎きは何のむくいぞと知る人あらば問はましものを

太宰大弐重家
恋ひ死なむことぞはかなき渡り川逢ふ瀬ありとは聞かぬものゆゑ

刑部卿範兼
妹があたり流るる川の瀬に寄らば泡となりても消えむとぞ思ふ

權中納言経房
はかなしな心づくしに年を経ていつとも知らぬあふの松原

寂蓮法師
思ひ寝の夢だに見えで明けぬれば逢はでも鳥の音こそつらけれ

俊恵法師
夜もすがら物思ふ頃は明けやらぬ閨のひまさへつれなかりけれ

俊恵法師
いたづらにしをるる袖を朝露にかへる袂と思はましかば

菅原是忠
恋ゆゑはさもあらぬ人ぞ恨めしき我よそならば問はましものを

藤原親盛
思ひ堰く心のうちのしがらみも堪へずなりゆく涙川かな

静縁法師
おのづからつらき心もかはるやと待ちみむまでの命ともがな