和歌と俳句

源師時

ぬぎかふる はないろ衣 惜しきかな 春の形見を たつとおもへば

わぎもこが かどならねど 卯の花の 咲ける垣根は 過ぎ憂かりけり

かけまくも かたじけなきは ちはやふる 神のみあれに あふひなりけり

ひさかたの 天の香久山の ほととぎす たまゆら来鳴け 神のまにまに

さらぬだに 草のいほりと なるやどに けふはあやめを ひきそふるかな

五月雨に 濡るるも知らず この里の かど田の早苗 急ぎてぞ取る

なをたのみ 鹿のかくるる かひもなく 小倉の山に ともしをぞする

いかにして 真菰をからむ 五月雨に たかせの淀も 水まさりけり

吹く風の なつかしきかな この里に 花たちばなの にほふなるべし

さみだれに 草朽ちにけり わがやどの よもぎがそまに 蛍とびかふ

雲かかる とをちの里の 蚊遣火は けぶりたつとも みえぬなりけり

はやことも をふねさしよせ かのみゆる しまねのはちす をらまくもをし

まだ知らじ こほりきえせぬ 氷室山 夏てふことの としにありとも

湧きかへる 泉の水の すむやどは まだ夏ながら 秋ぞ来にける

麻の葉に おもふことをば なでつけて 水無月はつる 禊をぞする