和歌と俳句

阿波野青畝

国原

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此書屋美しとさだまる破魔矢かな

上の字の袋きせ置く破魔矢かな

注連かけて耻づることなく庵せり

寒鴉木津は木津又淀は淀

年古りし梅に圧されて納屋かしぐ

涅槃図の穢土も金泥ぬりつぶし

鵯の矢の右往左往よ椿谷

手すさびに尼のつくろふ垣根かな

丁子の香をしみなければ馴れて住む

丁子の香おひかけてくる回縁

多摩堤

春曙の空のれり

花の山諸将の館の址を訪ふ

十五万石の城下へ花の坂

うちゑみて葵祭の老勅使

馬並べ葵の禰宜のたちならび

老骨の稜々としてかな