和歌と俳句

藤原教長

榊とる 程にしなれば からかみの おもしろしとや こころとくらむ

住吉の 神も風もや 祀るらむ 松にゆふしで かかる白波

君が代は 千代をかぎりて 石清水 神のこころに まかせてをみむ

大空を おほはむ袖に つつむとも 君が経む代の 数やあまらむ

わが身にも 仏のたねの あるなれば 花かつらを かけてこそみめ

やくさまで さらぬ高間も みなかみは ただたとはむの 流れなりけり

しなしなに よつの車を すすめずは のりはづれたる 人やあらまし

千載集・釈経
はかなくぞ 三世の仏と 思ひける こころ一つに ありと知らずて

千載集・釈経
照る月の こころの水に すむなれば やがてこの身に 光をぞ射す

かへりこむ 程はその日と 契れども たち別るるは いよよ悲しき

詞花集・春
ふるさとに とふ人あらば 山ざくら 散りなむのちを 待てとこたへよ

訪ふ人も なき旅寝する み山辺に 名乗りしてゆく ほととぎすかな

飽かず見し おなじみやこの 月なれば 旅の空にも 変はらざりけり

ふる雪に いかで家路を たづねまし をしふる駒の 跡なかりせば

草枕 おきゐる露は 君をのみ いも寝でかふる 涙なりけり

人ごとに 弓は持ちつつ しのはなし なにをかりこの やにははかまし

五月雨を くるしむ昆陽の 継ぎ橋も うきぬなにはの えこそ通はね

詞花集・雑歌
三日月の また有明に なりぬるや 憂き世をめぐる ためしなるらむ

千載集・夏
岩たたく 谷の水のみ おとづれて 夏に知られぬ み山べの里

千載集・冬
み山路は かつ散る雪に うづもれて いかでか駒の 跡を尋ねん

千載集・恋
よしさらば 君にこころは つくしてん またも恋しき 日ともこそあれ

新勅撰集・雑歌
なみよする ふきあげのはまの はまかぜに ときしもわかぬ ゆきぞつもれる

続後撰集・恋
なみだ川 ひとめつつみに せかれつつ 君にさへこそ もらしかねつれ

続後撰集・恋
あひみむと いつはりにだに たのめおけ 露の命の かかるばかりに