和歌と俳句

新勅撰和歌集

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皇太后宮大夫俊成
こひしさの ながむるそらに みちぬれば 月もこころの うちにこそすめ

二條院讃岐
ふけにけり これやたのめし 夜半ならん 月をのみこそ まつべかりけれ

嘉陽門院越前
あだびとを まつよふけゆく やまのはに そらだのめせぬ ありあけの月

正三位家隆
あまをぶね はつかの月の やまのはに いさよふまでも 見えぬきみかな

殷富門院大輔
まつひとは たれとねまちの 月かげを かたぶくまでに われながむらん

權大納言家良
ながらへて またやは見むと まつよひを おもひもしらず ふくる月かな

藤原隆信朝臣
こぬひとを なににかこたむ やまのはの 月はまちいでて さよふけにけり

正三位家隆
いけにすむ をしあけがたの そらの月 そでのこほりに なくなくぞ見る

大蔵卿有家
たびごろも かへすゆめぢは むなしくて 月をぞ見つる ありあけのそら

式子内親王
いかにせん ゆめぢにだにも ゆきやらぬ むなしきとこの たまくらのそで

大納言実家
うちなげき いかにねし夜かと おもへども ゆめにも見えで ころもへにけり

左近中将公衡
おもひねの われのみかよふ ゆめぢにも あひ見てかへる あかつきぞなき

参議雅経
なげきわび ぬるたまのをの よるよるは おもひもたえぬ ゆめもはかなし

正三位家隆
いかにせん しばしうちぬる ほどもがな ひと夜ばかりの ゆめをだに見む

殷富門院大輔
いかにせん いまひとたびの あふことを ゆめにだに見て ねざめずもがな

法橋顕昭
つらきをも うきをもゆめに なしはてて あふよばかりを うつつともがな

道因法師
ゆめにさへ あはずとひとの 見えつれば まどろむほどの なぐさめもなし

二條院讃岐
あはれあはれ はかなかりける ちぎりかな ただうたたねの はるのよのゆめ

藤原重頼女
ちぎりしも みしもむかしの ゆめながら うつつがほにも ぬるるそでかな

按察使兼宗
なつむしも あくるたのみの あるものを 消つかたもなき わがおもひかな