和歌と俳句

新勅撰和歌集

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權大納言家良
しかのたつ はやまのやみに ともす火の あはでいく夜を もえあかすらん

權中納言定家
あふことは しのぶのころも あはれなど まれなるいろに みだれそめけむ

従三位範宗
いかにせん ねをなくむしの からごろも ひともとがめぬ そでのなみだを

従三位顕兼
おのれなく こころからにや うつせみの はにおくつゆに 身をくだくらん

正三位知家
はしたかの とやまのいほの ゆふぐれを かりにもとだに ちぎりやはする

藤原信実朝臣
あづまぢの ふじのしばやま しばしだに 消たぬおもひに たつけぶりかな

大宮入道内大臣宗能
ことうらの けぶりのよそに としふれど なほこりはてぬ あまのもしほぎ

後京極摂政前太政大臣良経
そでのなみ むねのけぶりは たれも見よ きみがうき名の たつぞかなしき

左近中将公衡
ゆふけぶり のべにも見えば つひのわが きみにかへつる いのちとをしれ

大納言忠教
こひしなば きみゆゑとだに しられでや むなしきそらの くもとなりなん

土御門内大臣通親
さだめなき かぜにしたがふ うきぐもの あはれゆくへも しらぬこひかな

前大僧正慈円
こひしぬる 夜半のけぶりの 雲とならば きみがやどにや わきてしぐれむ

正三位家隆
おもひかね ながむればまた ゆふひさす のきばのをかの まつもうらめし

按察使兼宗
ひとごころ このはふりしく えにしあれば なみだのかはも いろかはりけり

大炊御門右大臣公能
つくづくと おつるなみだの かずしらず あひ見ぬ夜半の つもりぬるかな

皇太后宮大夫俊成
いかにせん あまのさかてを うちかへし うらみても猶 あかずもあるかな

待賢門院堀河
うたがひし こころのうらの まさしさは とはぬにつけて まづぞしらるる

従三位範宗
はるかなる ほどはくもゐの 月日のみ おもはぬなかに ゆきめぐりつつ

藤原資季朝臣
いつはりの ことのはなくば なにをかは わすらるる世の かたみとも見む

宮内卿
つのくにの みつとないひそ やましろの とはぬつらさは 身にあまるとも