和歌と俳句

平兼盛

十一 十二

つまづきも なくて今年は 数さしつ ゑひさまたれて 今日はかへりぬ

ちはやふる 神の社を たづねつつ けふのためてふ 祈りをぞする

ゑひにける われらは知らず あやもなし 誰がかつけたる 罪にかあるらむ

花薄 穂すゑの露に そぼちたる わが衣手を ぬきとるやたれ

あしひきの 山路とほくや 出でつらむ 日たかく見ゆる 望月の駒

いちとのみ 言ふぞはかなき よろづ代を かひにぞわれは 急ぎいでつる

よつのをに 思ふこころを しらべつつ ひきありけども 知る人もなし

白雲の 山辺はるかに きこゆるを なかとひたかく いでたちをする

なよたけの すゑのよ遠き わたらひは いちめもわれも かはらざりけり

さきざきに こりにし君が しひこひを なにわさしにか またはきませる

まねかねど あまたの人の すがたかな とみといふものぞ たのしかりける

年を経て おりつくすべき 糸なれや たなばたつめを やとひてしがな

旅人は すりもはたこも むなしきを はやくいましね 山のとねたち

沢水に 老いぬる影を みる鶴の なく音くもゐに きこゆらむやは

春雨に ゆきけの水も そふものを などて絶えぬる いづみなるらむ

つかふべき 数にをとどむ あさまなる みたらし川の そこにわくたま

あやしきは 駿河のかみと いひしより などうと浜の うとくなるらむ

うと浜の うときにはあらず 田子の浦の 恋ひしからむを かねてならふぞ

よこはしり 清見が関の 通ひ路に いつといふことは ながくとどめつ

せきすゑぬ 空に心の 通ひなば 身をとどめても かひやなからむ