和歌と俳句

山口誓子

旅人とわれとの落花踏む

栴檀の花天碧く咲き満ちて

湯もどりの子の濡髪に匂ふ

雨しづきつゝかぐはしき椎の花

花過ぎてなほ杜中に椎匂ふ

杜に入る一歩に椎の花匂ふ

何といふ寒さぞ一八花咲くに

溝の穢に一八白き蕾して

蛍火の砂に落ちたる海の浜

童女また夏は疵して遊びけり

干梅のやはらかさ指触れねども

星天を夜干の梅になほ祈る

清水飲むつつがの胸の板濡らし

炎天の遠き帆やわがこころの帆

蝸牛渦の終りに点をうつ

七月や赤き木屑を挽き散らし

七月や眼より馬情を推しはかる

七月の蛍遅しとせざるなり

帆を以て帰るを夏のゆふべとす

子の生れし家なりを刻むかな

旅籠屋の二階虫干するあはれ

育てたる妻をしのぎて蕃茄の木

妻も濡る青き蕃茄の俄雨