後京極摂政前太政大臣良経
ほととぎす いまいく夜をか ちぎるらん おのがさつきの ありあけのころ
祐盛法師
けふここに こゑをばつくせ ほととぎす おのがさつきも のこりやはある
權中納言師時
くもぢより かへりもやらず ほととぎす なほさみだるる そらのけしきに
俊頼朝臣
やよやまた きなけみそらの ほととぎす さつきだにこそ をちかへりつれ
覚盛法師
みなづきの そらともいはじ ゆふだちの ふるからをのの ならのしたかげ
よみ人しらず
くさふかき あれたるやどの ともしびの かぜにきえぬは ほたるなりけり
入道二品親王道助
しらつゆの たまえのあしの よひよひに あきかぜちかく ゆくほたるかな
参議雅経
なにはめが すくもたくひの ふかき江に うへにもえても ゆくほたるかな
祭主輔親
なつのよの くもぢはとほく なりまされ かたぶくつきの よるべなきまで
正三位顕家
よもすがら やどるしみづの すずしさに つきもなつをや よそにみるらん
如願法師
あけぬるか このまもりくる つきかげの ひかりもうすき せみのはごろも
藤原実方朝臣
はをしげみ とやまのかげや まがふらん あくるもしらぬ ひぐらしのこゑ
正三位知家
ゆふぐれは なつよりほかを ゆくみづの いはせのもりの かげぞすずしき
正三位家隆
なつごろも ゆくてもすずし あづさゆみ いそべのやまの まつのしたかぜ
後京極摂政前太政大臣良経
はやきせの かへらぬみづに みそぎして ゆくとしなみの なかばをぞしる
前関白道家
よしのがは かはなみはやく みそぎして しらゆふはなの かずまさるらし
正三位家隆
かぜそよぐ ならのをがはの ゆふぐれは みそぎぞなつの しるしなりける