後拾遺集・雑
こりぬらむ仇なる人に忘られてわれならはさむ思ふためしは
後拾遺集・雑
なにかその身のいろにしもたけからむ心を深き山にすませよ
後拾遺集・雑
ひかげ草かがやく影やまがひけむますみの鏡くもらぬものを
後拾遺集・神祇
白妙のとよみてぐらをとりもちていはひぞ初むる紫の野に
後拾遺集・神祇
今よりはあらぶる心ましますな花の都にやしろさだめつ
金葉集・春・詞花集・春
一重だにあかぬ心をいとどしく八重かさなれる山吹の花
金葉集・秋
おぼつかないづくなるらむ蟲の音をたづねば花の露やこぼれむ
金葉集・秋
ぬれぬれも明けばまづ見む宮城野のもとあらの小萩しをれしぬらむ
金葉集・秋
とりつなげ美豆野の原のはなれ駒淀の川霧秋ははれせじ
金葉集・秋
いづくにか駒をとどめむ紅葉ばの色なるものは心なりけり
金葉集・冬
川霧は汀をこめて立ちにけりいづくなるらむ千鳥なくなり
金葉集・冬詞花集・冬
霰ふる交野の御野の狩衣ぬれぬ宿かす人しなければ
金葉集・冬
み狩する末野にたてる一つ松とがへる鷹の木居にかもせむ
千載集・冬
妹がりと佐保の川べを我がゆけばさ夜やふけぬる千鳥鳴くなり
千載集・哀傷
老いらくの命のあまり長くして君にふたたび別れぬるかな
千載集・恋
藻屑火の磯間を分くるいさり舟ほのかなりしに思ひそめてき
千載集・恋
思ふこと岩間にまきし松の種千世よ契らん今は根ざせよ
千載集・恋
つれもなくなりぬる人のたまづさを憂き思ひ出の形見ともせじ
千載集・恋
やはらかに寝る夜もなくて別れにし夜々の手枕いつか忘れん
千載集・雑
貫けば散る貫かねば乱るあしひきの山より落つる滝の白玉
新古今集・秋
袖ひぢてわが手に結ぶ水のおもにあまつ星合の空を見るかな
新古今集・秋
ひぐらしのなく夕暮ぞ憂かりけるいつもつきせぬおもひなれども
新古今集・恋
あだごとの葉に置く露の消えにしをある物とてや人のとふらむ
新古今集・雑歌
都にも人や待つらむ石山のみねにのこれる秋の夜の月
新勅撰集・賀
きみが世の ちとせのまつの ふかみどり さわがぬみづに かげはみえつつ