和歌と俳句

大学は花に埋もれ日曜日 虚子

鵜が過ぎぬいまをさかりの花の上 誓子

花のある方へ方へとまがりけり 万太郎

コート脱ぐ間ももどかしく花に目を 万太郎

花の句をしるしあまりし句帖かな 万太郎

舟人の渦漕ぎ抜けて花仰ぎ 虚子

花静か天守の人語聞えつつ たかし

花に病む真昼の夢のうすみどり 朱鳥

花はまだ輪島の町は北を受け 虚子

花霏々と月の光を受け止めし 朱鳥

花の下那智の聖といふに逢ふ 虚子

主亡し花も調度も其ままに 虚子

花まぶし老斑の顔見交して たかし

東山西山こめて花の 虚子

つきひぢの内外の花のさかりかな 万太郎

喪服着て花の間いそぐ生き残り 多佳子

花下独坐このまま死ぬることあらむ 青畝

花の観音むかし舟にて詣でしか 林火

花濡れてくらがりの底くらかりき 楸邨

離々として志度寺の諸堂花の昼 爽雨

花の寺髯の関帝みそなはし 青畝

花匂ふ能郷白山の雪の香か 林火

襖絵も山奥山の花の宿 林火

借りて読む伊勢物語花の中 青畝

花満ちて久遠の雲といふべしや 林火

花の庫裡白き襖に仕切られし 林火