髪に触るゝ花房かろし棚の藤 淡路女
藤垂れてわが誕生日むらさきに 青邨
かかりたる藤の翠微のはなやかに 青畝
城頭に白藤咲けりすでにこぼれ 誓子
苗代の畦さへ藤を垂れにけり 風生
汝に告ぐ母が居は藤真盛りと しづの女
藤の花こぼして門は開くなり 青邨
墓守は読むこともなく藤の花 青邨
藤咲いて人にさみしきうなじがある 鷹女
藤咲いて海光ひとの額に消ゆ 鷹女
藤棚を低くぞ架けぬ草の上 たかし
松にのぼり池にひたりて咲ける たかし
高殿や四方の山に藤かかる 虚子
藤わたり仁王の棟の朱剥げたり 青邨
藤かかり立たせ給へる観世音 青邨
てのひらに藤房一つ花こぼす 青邨
山宿や藤のこぼるる裏庇 素十
白藤の花蔭にふむその落花 草城
藤の花這うていみじき樹齢かな 青畝
野の藤はひくきより垂り吾に垂る 多佳子
藤咲きて海も日毎に紺まさる 波津女
むらさきに隣る白藤見えわたる 槐太
藤のかげ友いとし妻さびにける 信子
女の心触れあうてゐて藤垂るる 信子
藤の花ほつりと夫を待つ日暮 信子
藤の花昼より雲の風を呼ぶ 占魚
棚藤の上なる山に懸り藤 たかし
高うして藤波池に映り得ず たかし
草深く木深き寺の藤を見し たかし
岩藤ののり出し咲ける淵くらし たかし
藤房の垂れて小暗き産屋かな 虚子
梢の子躍り満樹の藤揺るる 草田男
城塁や咲かむとしつつ藤白し 誓子
藤咲きぬ林あかるく風あふれ 秋櫻子
藤棚の西は茜の濃くなりつ 誓子
藤咲いて昼夜わかたぬ川流る 誓子