みにしみて はないろ衣 をしければ ひとへにけふは ぬぎぞかへつる
やまがつの 垣根をぞ訪ふ 卯の花の をりにとのみも ちぎらざりしを
としをへて まつのをやまの 葵こそ いろもかはらぬ かざしなりけれ
ほととぎす 夏は山辺に いへゐして まちどほなりし 初音をぞきく
よもぎふの ふせやがつまの あやめ草 けふひきわかず ふきてけるかな
遅れじと 山田の早苗 とる田子の たまゆらもすそ ほすひまぞなき
ともしして はやまのかげに 立つ鹿を 待つとせしまに 妹やうらみむ
さみだれは いりえのまこも かりにこし わたりもみえず なりにけるかな
さつきやみ 花たちばなの かをるかに あやなく人の 待たれこそすれ
かぜふけば さはべのくさは みだるれど ひかりきえせぬ 蛍なりけり
しつのをの そともにたてる 蚊遣火の 下に焦がれて 夜をやすぐさむ
みづきよみ いけのはちすの はなざかり このよのものと みえずもあるかな
なつのひの ひむろとおもへ あやにくに すずしきみづの こほりなりけり
もろともに すめる泉を ともとして なつをわするる やどにもあるかな
おもふこと おほあさにてぞ 夏はつる 川の瀬ごとに 禊をばする