和歌と俳句

源頼政

十一 十二

逢ふことの とどこほればや 白川の 流れと君は 頼まざるらむ

わがためは かたしく妹が 小夜衣 いかなる人に 隔てざるらむ

たちそはぬ 時の間ぞなき わぎもこが 声は隔てぬ なかの桧垣を

とどめてし わが心にや かはるらむ 見しおもかげに つれてきにけり

嘆きわび 夢にだにとて ねしかども さても見えねば せむかたぞ無き

そのかみは ふみならされし 道芝の 茂りにけりと 見るぞかなしき

人知れぬ 木の葉が下の 水なれや わが袖隠れ 落つる涙は

思はじと 思ひ消てども 消たれぬは わが胸にだく 思ひなりけり

あさ衣 かたの迷ひに もるたまは とどめもあへぬ 涙なりけり

ひと心 あれたるやどの 庭に生ふる からなづなかは つままほしきは

知らざりき あまの刈る藻に すむ虫の 名をばいつより 我に告げしぞ

あまの刈る 藻にすむ虫の その名をば 君には告げず わがものにして

なみだ川 色をば袖に 堰かれけり 梁瀬にとまる もみぢ葉のごと

鳥の子の すもりにとまる 身なりせば かへりてものは 思はざらまし

かへるとも たち離るなよ 鳥の子の はぐくむ親と 我を頼まば

をみなへし そのかた帯は めもたえて 花のさかりぞ なづさはれぬる

逢ふことは なぎさにかへる 白波の なほ寄り見るや こりすまの浦

妹をおきて 門出せしより 落ちそめし 涙もわれも えこそとまらね

思ひきや 妹をとどめて なく涙 いほの下萱 浮ぶべしとは

みをつまば けさの別れを 彦星も 空にあはれど 思はざらめや