和歌と俳句

藤原俊成

悠紀方御屏風六帖和歌十八首

子の日して小松が埼をけふみればはるかに千代の影ぞ浮かべる

をとめらも君がためとや亀岳によろづ世かねて若菜つむらむ

春の日の光はきはもなけれどもまづ花さくは梅原の山

松がえに枝さしかはす櫻山花も千歳の春やにほはむ

水のいろに花のにほひもひとつにて八千代やすまむ山吹の埼

布さらす麓のさとのかずそへて卯の花さける大瀧のやま

長澤の池のあやめをたづねてぞ千よのためしにひくべかりける

せく水も吉田のさとに植ふる田はかねて年経む影ぞみえける

岩間もる玉蔭の井の涼しきに千年の秋をまつ風ぞふく

七夕に今朝ひく絲もながかれと君をぞ祈る高宮のさと

照る月も光をしへていゆるかな玉よせ返す志賀の浦波

露しげき玉野の原の萩ざかり風ものどかにみゆる秋かな

いくちよの秋かすむべき菊の花にほひをうつすよし水のさと

かずしらず秋の刈穂をつみてこそ大蔵山の名にはおひけれ

もみぢ葉を染むるしぐれは降りくれど緑ぞまさる松が枝の岸

いく千代を幾栄ゆかむ御代なれや千坂の浦に千鳥なくなり

あづま路やひつぎの貢絶えじとて雪ふみわくる勢多のなが橋

きみが代は吉身の村の民もみな春をまつとやいそぎたつらむ