和歌と俳句

続後撰和歌集

十一

權大納言実雄
時わかず いつも夕べは あるものを 秋しもなどて かなしかるらむ

權僧正範玄
花すすき ほにいづる秋の 夕暮は まねかぬにだに 過ぐるものかは

寂延法師
もののふの 矢田野のすすき うちなびき をじか妻よぶ 秋は来にけり

二條太皇太后宮大弐
しらつゆは むすびおけども 花薄 草の袂は ほころびにけり

鳥羽院の御時、前栽合に 大蔵卿行宗
はなすすき まねかざりせば いかにして 秋の野風の 方をしらまし

伊勢
秋の野の 花の名だてに をみなへし かりにのみくる 人に折らるな

陽明門院
露ながら 折りてをかへれ をみなへし さが野の花も みぬ人のため

式子内親王
しらつゆの いろどる木々は おそけれど 萩の下葉ぞ 秋を知りける

前太政大臣実氏
おくつゆも あはれはかけよ 春日野に 残る古枝の 秋萩の花

太上天皇(後嵯峨院)
忘れずよ 朝きよめする 殿守の 袖にうつりし 秋萩の花

土御門院小宰相
露ながら みせばや人に あさなあさな うつろふ庭の 秋萩の花

權大納言忠信
ふるさとの 萩の下葉も 色づきぬ 露のみ深き 秋のうらみに

源家長朝臣
みやまには をじか鳴くなり 裾野なる もとあらの小萩 花やさくらむ

久安百首歌に 藤原実清朝臣
妻こふる なみだなりけり さを鹿の しがらむ萩に 置ける白露

名所歌奉りける時 前中納言定家
うつりあへぬ 花のちぐさに 乱れつつ 風のうへなる 宮城野の露

建保二年、秋歌奉りけるに 従二位家隆
はしたかの はつかり衣 露わけて 野原の萩の 色ぞうつろふ

前内大臣家良
鶉なく 小野の秋萩 うちなびき 玉ぬく露の 置かぬ日はなし

藤原隆季朝臣
露ふかき 秋ののはらの かり衣 ぬれてぞそむる 萩が花ずり

堀河院百首歌奉りける時、鹿 基俊
朝露に うつろひぬべし さをしかの むねわけにする 秋の萩原

鎌倉右大臣実朝
あさなあさな 露にをれふす 秋萩の 花ふみしだき 鹿ぞ鳴くなる