和歌と俳句

続後撰和歌集

安嘉門院甲斐
消ぬが上に さこそはの つもるらめ 名にふりにける 越の白山

藤原基雅朝臣
時しらぬ 山とはいへど 富士のねの み雪も冬ぞ 降りまさりける

承暦四年内裏後番歌合に 前中納言匡房
難波潟 芦の葉しのぎ 降る雪に こやのしのやも うづもれにけり

鎌倉右大臣実朝
夕されば しほかぜさむし 波間より みゆる小島に 雪は降りつつ

藤原光俊朝臣
ふりつもる 雪吹きかへす しほかぜに あらはれわたる 松が浦島

久安百首歌に 藤原清輔朝臣
しろたへの 雪ふきおろす 風越の 峰よりいづる 冬の夜の月

待賢門院堀河
白雪の つもれる年を かぞふれは わが身も共に ふりにけるかな

式子内親王
人とはぬ みやこのほかの 雪のうちも 春はとなりに 近づきにけり

従二位家隆
雪のうちに つひにもみぢぬ 松のはの つれなき山も くるる年かな

正三位知家
年くるる かがみの影も 白雪の つもれば人の 身さへふりつつ

道助法親王家の五十首歌に 惜歳暮 西園寺入道前太政大臣公経
おもへども かひなきみづの 渡し守 おくりむかふる 年の暮かな

千五百番歌合に 按察使兼宗
心あらば そまやま川の いかだしも しばしは年の くれをとどめよ

前大僧正慈鎮
いかにせむ ひとりむかしを こひかねて 老いの枕に 年の暮れぬる

皇太后宮大夫俊成
なかなかに むかしは今日も 惜しかりき 年やかへると 今はまつかな