柿本人麻呂
白露と 秋の花とを こきまぜて わくことかたき わがこころかな
祐子内親王家小弁
さをしかの こゑきこゆなり みやぎのの もとあらの小萩 はなざかりかも
大蔵卿行宗
かりごろも 萩のはなづり 露ふかみ うつろふいろに そぼちゆくかな
鎌倉右大臣実朝
みちのべの をののゆふぎり たちかへり みてこそゆかめ 秋萩の花
鎌倉右大臣実朝
ふるさとの もとあらの小萩 いたづらに 見る人なしに さきかちるらん
藤原基綱
しらすげの まののはぎはら さきしより あさたつしかの なかぬひはなし
權中納言師時
あさまだき たをらでをみむ 萩の花 うは葉のつゆの こぼれもぞする
按察使公通
をみなへし しめゆひおきし かひもなく なびきにけりな あきののかぜに
二條院讃岐
たづねきて たびねをせずは おみなへし ひとりや野邊に つゆけからまし
よみ人しらず
名にしおはば しひてたのまむ おみなへし ひとのこころの あきはうくとも
三條右大臣定方
をみなへし をるてにかかる しらつゆは むかしのけふに あらぬなみだか
左京大夫顕輔
わぎもこが すそのににほふ ふぢばかま つゆはむすべど ほころびにけり
權中納言長方
さらずとて ただにはすぎじ はなすすき まねかでひとの こころをも見よ
参議雅経
はなすすき くさのたもとを かりぞなく なみだのつゆや おきどころなき
源具親朝臣
こころなき くさのたもとも はなすすき つゆほしあへぬ あきはきにけり
藤原信実朝臣
まねけとて うゑしすすきの ひともとに とはれぬ庭ぞ しげりはてぬる
藤原成宗
いくあきの かぜのやどりと なりぬらん あとたえはつる 庭の荻原
前大僧正慈円
ぬしはあれど 野となりにける まがきかな をがやがしたに うづらなくなり
よみ人しらず
おぼつかな たれとかしらむ あきぎりの たえまにみゆる あさがほの花
後京極摂政前太政大臣良経
白雲の ゆふゐるやまぞ なかりける 月をむかふる よものあらしに