和歌と俳句

西行

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さだめなし風わづらはぬ折だにもまた来んことを頼むべき世か

あだに散る木の葉につけて思ふかな風さそふめる露の命を

われなくはこの里人や秋深き露の袂に懸けて忍ばん

さまざまにあはれ多かる別れかな心を君が宿にとどめて

帰れども人のなさけに慕はれて心は身にも添はずなりぬる

年ふれど朽ちぬ常磐の言の葉をさぞしのぶらん大原のさと

家の風むねと吹くべき木の本は今散りなんと思ふ言の葉

家の風吹き伝へけるかひありて散る言の葉のめづらしきかな

こがらしに木の葉の落つる山里は涙こそさへもろくなりけれ

峰渡るあらしはげしき山里に添へて聞ゆる滝川の水

訪ふ人も思ひ絶えたる山里のさびしさなくは住み憂からまし

暁のあらしにたぐふ鐘の音を心の底にこたへてぞ聞く

新古今集・雑歌
待たれつる入相の鐘の音すなり明日もやあらば聞かむとすらむ

松風の音あはれなる山里にさびしさ添ふるひぐらしの声

谷の間にひとりぞ松も立りけるわれのみ友はなきかと思へば

入日さす山のあなたは知らねども心をかねて送りおきつる

何となく汲むたびぬ澄む心かな岩井の水に影映しつつ

水の音はさびしき庵の友なれや峰のあらしの絶え間絶え間に

鶉伏す刈田のひつち生ひ出でてほのかに照らす三日月の影

あらし越す峰の木の間をわけ来つつ谷の清水に宿る月影