和歌と俳句

源俊頼

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いにしへの たきつしまひめ ならねども あかずおぼゆる 和歌の浦かな

みかさやま たちはなれにし あしたより なみだのあめに ぬれぬ日ぞなき

みかさやま たちはなれにし そのかみの たもとはわれも さこそぬれしか

やまびこは このもかのもに こたへつつ おとたかさごに ふねくだすなり

ふるさとと なりぬる宮の ゆふかすみ おもひがけずや たちかはるらむ

おもへただ たけの都は かすみつつ しめのほかなる みよのけしきを

かへるべき きみがをしさに 都路の 花さへつらき 春の空かな

かぎりありて たちかへるには さくら花 雁がねをだに えやはとどむる

きみがよを 神々いかに まもるらむ しげきめゆひの かずにまかせて

おひしげる ねふりのもりの したにこそ めざまし草は 植うべかりけれ

あくたゐて きたなき溝の みづぐきは かきながせども しどろもどろに

はるならで さくらだにをば みにゆかじ あきともあきぬ みちのとほさに

さくらだに まことににほふ ころならば みちをあきとは おもはざらまし

すてられて うきせにたてる みづぐるま よにめぐるとも 見えぬ身なれや

つかなみの うへによるよる たびねして くろつの里に なれにけるかな

つかなみま うへはくろつに なるれども したのねよさに しくものはなし

みながらも ならぬこころは ほどもなく いとふ都の かたぞこひしき

ながめやる かたをもいかが さへざらむ はかなきことに くははなれねば

かせかけて ひしるをじかの こゑきけば ねらふわがみぞ とほざかりぬる

金葉集・雑
なきかげに かけける太刀も あるものを さやつかの間に 忘るべしやは