和歌と俳句

源俊頼

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ときは木の はなれてひとり みえつるは ならひなしとや 身をばしるらむ

まねけども たちもとまらず すぎぬれば しをれやすらむ はなのたもとは

すすきをば たをりめしてよ ほにいでて たてらぬひとを まねきもぞする

千載集・雑歌 物名
我が駒を しばしとかるか 山城の 木幡の里に ありと答へよ

ちるはなを みなへしもちて ゆくあきの こひしきときの かたみとやせむ

かたちをば みてもしのばで あやしくも ちつきのこまの こひしきやなぞ

はるくれば たなびくけぶり たえせずと きくのはなにの くさかもゆらむ

千載集・雑歌 物名
夜とともに 心をかけて 頼めども 我から神の かたきしるしか

おもへども けふぞくやしき ひとこころ 見ぬよりさきに 何たのみけむ

ほうしこの いねとみしまに もちぬれば みそうつまでも なりにけるかな

わがそでは まくりてにして かくせども いかでかさめに ぬるとみるらむ

こぬすみは このふたりこそ このむらめ なぞやわが身を うたがはるらむ

いつみから すのすきわたり あまきみに あまのりあふれ ささせまうさむ

いかにして こころみたらし かはづなく ゐでのやまぶき ちりまがふとも

さきいづる ふぢのこまつに かからずは いかでちとせの ほどをすぎまし

おいのくる みのからくのみ おぼゆるは おもてになみを たたむなりけり

春の野に こまつふりつむ あはゆきを けたずてをりて いへづとにせむ

千載集・雑歌 物名
みくら山 真木の屋立てて 住む民は 年をつむとも 朽ちじとぞ思ふ

よとともに てつからかうし あげおろす ほどにわが身の なりにけるかな

はりはこの ふたつのそでに さしつれど ひとつも見えず おちにけるにや

おばつかな あしたかぎりか けふもまた くれゆくそらに 身ぞまがへつる

ひめこまつ ねたくみどりの すがたをば たちへだてける はるのかすみか

ほどもなく とくさむくのは なりにけり むしのこゑごゑ よわりゆくまで

あかしには このしまのみや しろたへの ゆきにまがへる なみはたつらむ

金葉集・雑
いくかへり花咲きぬらむ住吉の松も神代のものとこそ聞け

金葉集・雑
さりともとかく眉墨のいたづらに心細くもなりにけるかな

金葉集・雑
日の光あまねき空のけしきにも我が身ひとつは雲隠れつつ

詞花集・雑
須磨の浦に焼く塩釜のけぶりこそ春にしられぬ霞なりけれ

千載集・雑歌
真木の戸をみ山おろしに叩かれてとふにつけても濡るる袖かな

千載集・雑歌 俳諧歌
卯の花よいでことごとしかけ島の波もさこそは岩を越えしか

千載集・雑歌 俳諧歌
したひ来る恋のやつこの旅にても身のくせなれや夕とゞろきは

千載集・雑歌 俳諧歌
かみにおける文字はまことの文字なれば歌もよみぢを助けざらめや

新勅撰集・雑歌
こひしとも いはでぞおもふ たまきはる たちかへるべき むかしならねば